みなさんこんにちは!スタッフのタニ子です。
突然ですが、みなさんは「ビデオテープの2025年問題」ってご存じでしょうか??
2019年に、ユネスコが、
ビデオテープ(磁気テープ)に警告する取り組みを開始しました。
Magnetic Tape Alert Project(磁気テープアラートプロジェクト)です。
これが「ビデオテープの2025年問題」とも言われ、
今、テレビやネットなどで話題になっています。
今回はそんな「ビデオテープの2025年問題」を、
ダビング業者の視点から解説していきたいと思います!
※画像はユネスコ公式サイトより引用
磁気テープアラートプロジェクトって?
まずは、ビデオテープの2025年問題と言われるきっかけになった取り組み、
Magnetic Tape Alert Project(磁気テープアラートプロジェクト)が
どんな内容だったのか、簡単に解説いたします。
■いつ?
2019年7月
■誰が?
ユネスコの、IFAP「Information for All Programme(すべての人のための情報プログラム)」と
IASA(国際音声視聴覚アーカイブ協会)
■どんな目的で?
世界中にある、ビデオテープで記録されている様々な映像データ
(主に歴史的な記録や文化・美術などに関する様々な貴重なデータ)を
デジタル化し、保存していくため。
また大々的に発表する事で、そういったデジタル化に関する予算を確保するため。
■具体的などんな事を言っているの?
約60年にわたり、映像記録の代名詞だった「ビデオテープ」ですが、
ビデオテープの形式はすでに時代遅れになっています。
すでに動作が可能な再生機器は少なくなってきており、また部品やその供給、
ダビングサービスも減少の一途をたどっています。
その結果、2025年にはビデオテープを再生しダビングすることができなくなる
可能性があります。
ビデオテープに記録された映像・音声を長期的に保存し、将来的に残していくためにも
デジタル化が急務です。
Magnetic Tape Alert Project(磁気テープアラートプロジェクト)を通じて、
関係者にビデオテープなどの映像資料が失われてしまうリスクを認識してもらい
警告することを目指しています。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
なんとなくお分かり頂けましたでしょうか?
2025年頃に、ビデオテープなど磁気テープの、
再生デッキ・部品の供給の停止、ダビング業者の減少など、
磁気テープを取り巻く環境の急速な衰退により、
テープが再生できなくなるおそれがあると推測しています。
そもそもビデオテープってどんなテープ??
ビデオテープは、「磁気テープ」とも言われ、
テープ状のフィルムに粉末化した磁気性のある素材を圧着したテープの事を言います。
録画用・録音用・データ/コンピュータ用があり、その用途によって様々な種類が存在しました。
身近なものでは、
録画用は、VHS・ベーター・VHS-Cカセット・8ミリビデオ(Hi8)・miniDVなどが、
録音用は、オーディオカセットテープなどがありました。
またもう少し古いものですと、
リールに巻かれたオープンのビデオテープやオーディオテープもありました。
実際、ビデオテープを取り巻く状況はどうなっているの??
当社にご来店されるお客様の中には、2025年問題を聞いて、
「見られなくなると思って急いで持ってきた!」と
おっしゃる方がよくいらっしゃいます。
ビデオテープは再生できなくなってしまうのでしょうか。
再生するためのビデオデッキは無くなってしまうのでしょうか。
ビデオテープの現状
ビデオテープは、テープにもデッキにも問題がなければ今でもきれいに再生できる事が多いです。
ただ、再生できないテープも増えてきています。
どんなテープが再生できないのかご紹介していきましょう。
➀「カビ」が生えたテープ
最近とても多くなってきたのが、カビの生えてしまったテープです。
湿気やほこりの多い場所で何年も放置された事で発生します。
※同じ場所に保管しておいたテープでも、
カビが生えるテープと生えないテープが混在する場合があります。
カビが生えると、こんな風にテープ部分が真っ白になってしまいます。
この状態でビデオデッキに入れると、デッキの内部やヘッドにカビがついてしまい、
あっという間にこのデッキは映像を映し出すことができなくなります。
こうしたテープのカビは、
ゆっくりと何回もカビ取りの作業をしてきれいにすることができますが、
見た目にきれいになっても再生に支障がでる場合もあります。
きれいにカビ取りをしても、テープの細部にカビが残っていると、
映像にノイズやブレが出たり、再生ができない事もあります。
➁カビが原因となって起こる「テープの癒着」
カビが生えてしまった部分というのは、カビ・湿気がたまり、
巻き付けてあるテープ同士をくっつけてしまいます。
そのため、テープを動かそうとするとくっついた部分で一回転するごとに切れてしまいます。
ただ切れるだけならまだしも、下の画像のように長く裂けてしまい、
こうなってしまうとテープ修復もできない状態になってしまいます。
➂テープ磁気のはがれによるヘッド汚れ
テープが古くなってくると、再生の時にテープに塗布されている磁気素材が取れやすくなります。
そうすると、ビデオデッキの内部で鉄粉が飛び散り、ヘッドがすぐに汚れてしまいます。
赤い丸で囲んだヘッドが汚れると読み込みできず、
映像が乱れたり、映像が出てこなくなります。
ヘッドのクリーニングをして続行できる場合もありますが、
ひどいと、クリーニング→ヘッドが汚れる→クリーニング・・・を
繰り返さなければいけなくなります。
大抵のダビング業者は、こうなったらダビング不可と判断するかと思いますし、
ヘッドが汚れたまま乱れた映像をダビングする事もあり得ます。
ビデオデッキの現状
磁気テープアラートプロジェクトが警鐘を鳴らしている通り、
正常に動くビデオデッキというのは明らかに少なくなってきていますし、
完全動作品と言うのは、非常に高い値段がついてしまっています。
ビデオのダビングには正常に動くビデオデッキが必須です。
当社でも常に数十台のビデオデッキが稼働しています。
このビデオデッキは、もちろんどこのメーカーもすでに生産終了になっているので、
台数を確保するためには、オークションや中古品販売で手に入れたり、
今あるデッキを修理をしながら維持をしている状況です。
結局、テープのダビングはいつまでにすればいいの?
もし今ビデオテープをお持ちでしたら、
まずはそのテープをよく観察してみてください。
下記のような異常があれば、なるべく早めにダビングする事をお勧めいたします。
テープにカビが生えていませんか?
これは一目で分かります。
ケースに入っているテープはケースから出してチェックしてみてください。
特に結婚式などのテープは、専用の立派なケースに入っている事もあり、
開けたらカビまるけ!という事もありますので要チェックです。
テープ本体に異常はありませんか?
・本体がサビ付いている
・ねじが足りなさそうでガタついている
・テープが飛び出してしまっている
こうした異常は、修理などの専門的な技術が必要になります。
(見た目に異常がなくても修理が必要な事もありますが)
ダビング業者や修理ができる技術者が少なくなってきていますので、
将来的にはダビングができなくなる可能性が高いです。
見た目に異常が無いテープ
今すぐにダビングをしなければ再生できなくなるという訳ではありませんが、
早めにデータ化しておくことをお勧めします。
その理由としては、
➀ダビング作業中にテープの劣化によるトラブルが発生しやすくなる。
➁ダビング業者・ビデオデッキが減少していく事で、
今後ダビング料金が高額になる可能性が高い。
すでに生産から数十年経っているビデオテープは、
再生中に何が起こるか予想がつきません。
多くは問題なくできるテープでも、
それがみなさんが持っているテープかどうかは確証はありません。
ご自宅にビデオテープがあったなぁと思われる方は、
ダビングを検討するきっかけにしてみてはいかがでしょうか。
まとめ
当社がダビング業務を始めて40年近く経ちますが、
8ミリフィルムからビデオテープ、
ビデオテープからDVD、
DVDからデータ・・・と、時代が移り変わるように、
思い出の記録の方法も変わってきました。
2025年問題は、大きな反響ですが、自然な流れの一つでもあります。
大切な思い出の映像は誰もが取っておきたいと思いますし、
何物にも代え難い貴重な映像です。
2025年問題は、ビデオテープを持っているすべての人へ、
素晴らしいきっかけを作ってくれたと思います。
また同時に、これからもこういった変換期は訪れると思います。
(すでにDVDからデータ化への動きがあります。)
その時のために、大切な映像や記録はどのように保管していくのがいいのか、
今一度考えるきっかけにするのもいいかと思います。